東京電力福島第1原発事故で全町避難が続く福島県双葉町の盆踊りを継承しようとする人々を追ったドキュメンタリー映画「盆唄」が完成し、上映が15日、県内の映画館などで始まる。避難先に暮らす町民の思いとハワイの日系移民や先祖の歴史が交錯し、古里や伝統の意味を問い掛ける。

 沖縄県を舞台にした恋愛映画「ナビィの恋」で知られる中江裕司監督(58)がメガホンを取り、2015~17年に関係者に密着した。
 「双葉盆唄」の継承に危機感を抱いた町民有志はハワイに着目。福島からの移民が100年以上前に伝えた盆踊りが「フクシマオンド」として残る地で、今度は盆唄を日系移民に伝えようと現地に渡った。カメラは指導、交流の様子も追った。
 ハワイの人たちに盆唄を引き継いでもらい、双葉町に戻れるようになった後、帰町した町民たちに教えてもらう狙いだ。
 映画では江戸時代後期の大飢饉(ききん)後、北陸などから多くの農民が同町を含む旧相馬藩領に移住した歴史も描かれる。17年夏に町内各地区の人々がいわき市に集まり、盆唄を披露した様子も記録されている。
 ハワイで盆唄を指導した電気工事業横山久勝さん(64)=本宮市=は「双葉の盆踊りを映像と音で残したかった」と振り返る。町民が散り散りになり、盆唄の練習機会を確保するのも容易ではないといい、「避難とはどういうことなのかを知ってほしい」と話す。
 上映時間は2時間14分。フォーラム福島(福島市)まちポレいわき(いわき市)テアトル新宿(東京)の3会場を皮切りに、3月29日からのフォーラム仙台(仙台市)など全国で順次公開予定。

◎「勇気や希望感じて」中江裕司監督に聞く

 映画「盆唄」の試写会があったいわき市で1月中旬、中江裕司監督に話を聞いた。
 -どんな思いで製作を。
 「魅力的な双葉の人たちがたくさん出てくるが、古里に帰れない悲しい現実は常に付きまとう。そこを映画にすることもできたが、みんなが見たい映画、『娯楽』にすべきだと思った」

 -「希望」はどこに見いだしたか。
 「ハワイの移民は長い時間をかけて苦労して土地に根を張り、子孫はその地を古里だと考えている。北陸から移住してきた町民の子孫もそう。人の営みは力強く素晴らしい。5年、10年ではなく、100年、200年で捉えれば『みんながつらい状況も乗り越えてきたよね』ということだと思う」

 -観客へのメッセージは。
 「自分はつらいけれど次の世代につなごうとしている町民の姿を通し、地元の人だけでなく、全国のみんなに勇気や希望、あしたを感じてもらえれば幸せだ」