東日本大震災からの復旧・復興で岩手県には、累計1兆6700億円超の国費が投じられてきた。基盤整備に一定のめどが付きつつある一方、「ポスト復興」局面には財政上の難題が山積している。施設の維持管理費、被災者支援の今後、後回しにされた一般事業…。巨額復興財政の内実を探る。

◎第2部・復興財政(3)「一過性」への懸念

 「一過性のイベントに多額の県費を用いる価値があるのか」「効果的な取り組みにする工夫が必要だ」。
 2018年9月の岩手県議会総務委員会で、県の新規事業が集中砲火を浴びた。沿岸13市町村を会場に19年6~8月、68日間にわたって開催する博覧会「三陸防災復興プロジェクト」だ。

<変質した概念>
 シンポジウムや音楽、芸術関連のイベントを繰り広げて東日本大震災からの復興を内外にアピールし、被災経験の伝承や防災意識の向上を発信するという。
 釜石市が試合会場の一つとなる9、10月のラグビーワールドカップ日本大会とともに被災地を盛り上げ「復興まちづくりの礎とする」と県はうたった。
 達増拓也知事は「開催することで、今後の三陸沿岸のありようが見えてくるだろう」と思わせぶりに意義を説く。見込まれる総事業費は4億6000万円。ほぼ全額が県の持ち出しとあって、議会の批判はやまない。
 県の手掛ける博覧会は、1992年夏の「三陸・海の博覧会(三陸博)」以来、27年ぶりとなる。
 三陸博は宮古、釜石、山田の3市町を会場に目標の3倍近い201万人が来場。832億円の経済波及効果を生み出し、剰余金10億円で地域振興基金を造成する大成功を収めた。
 だが三陸博の閉幕直後、バブル経済の崩壊や大型テーマパークの出現によって地方博の集客力は急速に低下していく。
 「以前の博覧会は整備した都市基盤のお披露目や産業振興、技術競争の性格が強かったが、今は地域に元々あるものを活用するのが主流。博覧会の概念自体が変質した」
 博覧会の歴史に詳しい奈良県立大地域創造学部の堀野正人教授(観光社会学)は、こう分析。打ち上げ花火で終わらせてはならないとくぎを刺す。

<条件付き認定>
 永続的に取り組むべき震災の伝承が一過性の盛り上がりで終わってしまう。その懸念が既に表面化しているのが「三陸ジオパーク」だ。
 八戸から気仙沼まで青森、岩手、宮城3県の沿岸16市町村をエリアとする三陸ジオパークは13年9月に日本ジオパーク委員会の認定を受けた。リアス海岸の地形や地質に加え、数々の震災遺構や震災学習拠点が高い評価を得た。
 だが、17年12月の再審査で委員会が言い渡したのは「条件付き認定」。「運営体制が脆弱(ぜいじゃく)で、活動目的が住民と共有されていない」と手厳しい指摘を受けた。
 三陸ジオパーク推進協議会長の山本正徳宮古市長は「自分たちの地域に自信を持ち、魅力を伝えることで観光や産業も振興する」と語り「ジオパークにお金をかける価値は十分にある」と強調するが…。
 「復興の象徴」とされた三陸ジオパークの認定などに要した経費は、県負担分だけで累計1億3000万円。19年秋までに改善されなければ、認定はわずか6年で取り消しとなる。