◎第2部・復興財政(4)滞る一般工事

 岩手県南部を東西に貫いて内陸部と沿岸部を結ぶ国道343号。一関市大東町と陸前高田市の境にある笹ノ田峠は、冬場の難所として知られる。
 気温は氷点下10度近くまで冷え込むことも珍しくなく、凍った路面がドライバーの緊張を誘う。大型トラックが通るたび、築30年のループ橋は小刻みに振動する。

<内陸は対象外>
 「あの時も、多くのトラックが道を怖がって引き返した。新トンネルさえあれば、支援車両が3倍は通れたはずだ」
 旧大東町長の小原伸元さん(83)が、東日本大震災発生直後の光景を振り返る。町長だった1990年代から、笹ノ田峠を安全に通行できるよう長さ約3キロの新トンネル建設を訴え続けてきた。
 国道343号は震災後、復興支援道路に位置付けられた。地元自治体などが「新笹ノ田トンネル整備促進期成同盟会」を設立して要望活動も加速。9万5000筆を超える署名が集まった。
 しかし何も変わらなかった。地震で傷んだ路面の改修こそ行われたものの、切望した新トンネル建設は事業化のめどすら立っていない。「たとえ復興支援道路でも、内陸部は整備の対象外」と諦めの声も漏れる。
 震災前、県の公共事業費は内陸部が沿岸部を上回っていた。2010年度当初予算の公共事業費は内陸部の459億円に対し、沿岸部は207億円だった。
 震災後は被災地の復旧・復興工事が優先され、相対的に内陸部への投資は減った。震災関連以外の公共事業費は11~17年度、前年度比80~95%に抑えるマイナスシーリング(要求基準)が続いた。
 16年8月の台風10号豪雨被害も追い打ちを掛けた。県は850億円超の復旧費を計上。国の支援もあって県財政への打撃は大きくなかったが、建設業者の不足が深刻化し、内陸部の公共事業はますます手薄になった。
 復興工事がピークを越えた18年度でも、公共事業費は沿岸部の809億円に対して内陸部は365億円と倍以上の差がある。
 内陸部のある首長は「大っぴらには言えないが、県の施策は沿岸部ばかり。被害が大きいのでやむを得ないが、内陸にも少しは目を向けてほしい」とぼやく。

<予算も平常に>
 県は19年度、震災関連と台風10号豪雨復旧事業以外の公共事業費について前年度比5%のプラスシーリングを設定した。プラス設定は平成になって初めてとなる。
 県財政課は「復興事業が収束して公共事業量が落ち切った後に再び上げるのは時間がかかる。今から(一般工事の増加を)クロスさせて対応する」とプラスシーリングの狙いを説明する。
 実際、震災で6000億円台から一気に1兆円超に跳ね上がった県の一般会計当初予算は、復興事業の進展に伴って平常運転に戻りつつある。
 県の19年度一般会計予算規模は当初で9355億円。達増拓也知事は「新時代スタートダッシュ予算」と名付けたが、新笹ノ田トンネルの整備事業費は計上されなかった。