人口が減る。地域を支える担い手が足りない。人口減少局面で起きた東日本大震災は、過疎化や少子高齢化を加速させた。震災から間もなく8年。縮む被災地の先に広がる風景は-。「生業(なりわい)」「生活」「インフラ」の三つをキーワードに、先鋭化する課題に向き合い、模索する姿を追った。 人口が減る。地域を支える担い手が足りない。人口減少局面で起きた東日本大震災は、過疎化や少子高齢化を加速させた。震災から間もなく8年。縮む被災地の先に広がる風景は-。「生業(なりわい)」「生活」「インフラ」の三つをキーワードに、先鋭化する課題に向き合い、模索する姿を追った。

 丸刈りにされ、むき出しになった山肌が広がる。浜の災禍は三陸の豊かな森も無縁ではなかった。

 東日本大震災後、釜石市と岩手県大槌町で被災した山主が木を全て切り、売り払うケースが続出した。住宅再建資金や生活費を工面するためだ。

<再造林せず放置>
 計200ヘクタール以上伐採されたが、費用がかかる再造林はせず、多くは放置されたまま。森林の保水力低下による自然災害や養殖業への影響を懸念する声もある。

 林野率が9割近い両市町を管内とする釜石地方森林組合の高橋幸男参事(54)は「林業がもうからず、森林を不良資産と感じている山主は多い。責めることはできない」と苦悩する。

 安い外国産材に押され、国内産の木材価格は低迷。スギ丸太1立方メートルの価格は1万3100円(2017年)で、ピーク時の約3分の1に落ち込んだ。

 震災と担い手の高齢化が追い打ちを掛け、林業の衰退が加速する。15年農林業センサスによると岩手、宮城、福島の被災3県の林業経営体数は計9073。10年比で42.8%も減った。減少率は全国平均を5.1ポイント上回る。

 組合は17年、国と県の補助に上乗せし、再造林する山主の負担を原則ゼロにする支援制度を設けた。林業スクールによる人材育成にも力を入れ、「持続可能な林業」へ模索を続ける。

 林野率が約8割の宮城県南三陸町で23日、首都圏からのツアー客を「南三陸杉」が生い茂る森に案内するイベントがあった。

 町内の林業「佐久」の佐藤太一専務(34)は「多様な動植物が共存するのが良い山。丁寧に間伐して手入れをすれば光や風が適度に入り、木質が高まる」と説明した。

 佐久など林業経営者らでつくる南三陸森林管理協議会は15年、環境に配慮した森林経営を促す国際機関・森林管理協議会(FSC)の認証を取得し、南三陸杉のブランド化を進める。

 ただ、認証を受けた森林は町全体の1割。一般の山主が所有する森林は小規模で各地に分散し、管理が難しい。多くが荒れ放題だ。

<担い手に集約化>
 全国に広がる森林の荒廃を食い止めようと、国は4月、「森林バンク」制度を始める。所有者が管理できない人工林を市町村が引き受け、意欲的な担い手に再委託する仕組みだ。財源は24年度に創設される新税「森林環境税」を充てる。

 佐藤専務は「小規模な森林を集約できる。管理を請け負うことでFSC認証林を拡大でき、雇用創出にもつながる」と意欲を示す。

 大槌町で間伐に取り組むNPO法人「吉里吉里国」の芳賀正彦理事長(71)は震災時、「海がなくなった」と気落ちする漁師たちを見て、「まだ森や山がある」と自らを鼓舞した。

 漁師ら山主の同意を得て、放置された山林から枯れ木や折れ曲がった木だけを切り出す。良質な木には手を付けず、成長を促す。

 芳賀理事長が覚悟を口にする。「樹齢50年のスギを100年まで育てれば高値が付く。地元で生きる子や孫たちが林業を収入源にできる下ごしらえをしたい。自分たちの代が捨て石になってもいい」

 山を守ることは、三陸の浜の生活と豊かな海を守ることでもある。