昨年9月に夕刊で里親制度について連載して以来、家族の元で暮らせない子どもたちを支える官民の取り組みの取材を続けている。貧困や望まない妊娠などで生みの親が育てられない子が血縁のない大人と戸籍上の実親子となり、新しい家庭をつくる特別養子縁組の見直しをはじめ、社会的養護が必要な子どものための制度拡充が進む。全ての子どもの健やかな育ちを保障するには、子どもの人権を重視した社会の正しい理解が欠かせない。
 生みの親の経済的事情や病気、虐待などのため、乳児院と児童養護施設や里親家庭で暮らす東北6県の子どもの数はグラフの通り。施設で暮らすケースが大多数を占める。日本は1994年に「子どもの権利条約」を批准したが、国連から社会的養護体制が施設養育に偏っていると問題視され続けている。

 特別養子縁組制度は88年、生みの親の元にいられない子どもたちが、安定した家庭の中で成長できるようにと始まった。だが、全国の特別養子縁組の成立件数は年間計500件前後にとどまり、期待通りに広がっていない。
 背景には、「特別養子縁組は不妊に悩む夫婦のために乳幼児を紹介する制度」といった誤解があると感じている。「生みの親の存在を隠したい」。縁組希望者、縁組成立者にあるそんな意識が、制度の利用拡大を阻んでいる。
 「特別養子に迎えた子が生みの親から唯一もらった大事な縫いぐるみやタオルを捨ててしまう養親(育ての親)もいる」と話す児童福祉関係者もいた。
 厚生労働相の検討会は、2017年8月に公表した「新しい社会的養育ビジョン」で、子どもの出自を知る権利について言及。「幼少期から、出自を年齢に応じた方法で伝える必要があり、それがアイデンティティーや自尊感情など、生きる上での土台を形成する」などと記した。
 「生んだ人をいなかったことにしない」。国内初の試みとして、養子縁組に託した生母や里親に預けた人、養子縁組家族らの写真展「フォスター」が昨年3月から全国展開されている。
 写真展企画者の一人、静岡大の白井千晶教授(家族社会学、医療社会学)は「社会に隠されていることで子どもは傷つく。生みの親と里親、養親の信頼関係も生まれない」と指摘する。

 仙台市内でも4月、社会的養育の推進に向けた民間主導の勉強会「赤ちゃんポストと子どものいのちを考える会@sendai」が始まる。
 発起人のNPOスタッフ東田美香さん(49)は、市の登録里親で養子縁組希望者。「予期せぬ妊娠に悩む女性と赤ちゃんを守るため、立場を超えて市民が話し合う場にしたい」と意気込む。
 16年改正の児童福祉法で、全ての子どもは家庭で育つ「権利の主体」と明示された。健全な成育環境を整えることは社会にとっての義務でもある。
 国と自治体は里親委託や特別養子縁組の増加に力を注ぎ、民間による広報活動も活発になっている。どんな施策も打ち出すだけでは実効性は伴わない。制度や子どもの権利について正しい理解を促すことが、縁組拡充への力強い第一歩となるだろう。
(夕刊編集部・橋本智子)