国内でほとんど知られていない銘柄のコメ「ほっかりん」が3月末、むつ市からベトナムに向けて出荷された。冷涼な気候で稲作に不向きな青森県下北地方で栽培されたコメ。競争の激しい国内市場ではなく新たな可能性を求め、いきなりの世界デビューを果たす。

 ほっかりんは2011年に下北地方で生産が始まったわせ品種で、寒さに強いのが最大の特長。冷めても味が落ちないことから、おにぎりやすし、弁当での消費が期待されている。
 第1陣として3月28日に出荷したのは2トン。栽培したむつ市奥内の立花幸雄さん(66)の自宅前に市幹部ら約30人が詰め掛け、ほっかりんを載せて出発するトラックを見送った。
 立花さんは「輸出用に手掛けたのは私が最初。うまくいったら他の農家にも続いてもらい、新規就農者の増加につなげたい」と願いを込めた。
 コメはトラックで横浜港まで運び、4月中旬に船でベトナムに向かう。現地での検疫を経て5月初めにホーチミンのレストランで提供が始まる。
 輸出のきっかけはベトナムで飲食店を展開するオカムラ食品工業(青森市)が店で使うコメとして選んだことだ。同社の岡村大祐取締役は「味、食感が良く、冷めてもおいしい。現地の反応をみて今後の取扱量を考えたい」と話した。
 夏に冷たい季節風が吹く下北地方は、もともとコメ作りに適さない地域とされてきた。10アール当たりの収穫量も津軽地方の7~8割にとどまり、安定した収入を得るにはより多くの労力と手間が必要で、作付面積が広がらなかった。
 昨今は高級米嗜好(しこう)が広がり、国内で選ばれるための条件はさらに厳しい。
 輸出を支援したむつ市の宮下宗一郎市長は「新しい市場に売り出すことは農業の価値を上げる答えの一つ。日本農業の新しい扉を開くきっかけになってほしい」と話した。