各自治体で浸水域の表し方がまちまちになっている津波ハザードマップや防災マップを巡っては、利用者の視点から分かりやすい表示を求める声が上がる一方、配色や内容について自治体間で調整を図る試みも始まっている。
 防災士で山形県酒田市議の江口暢子さん(58)は酒田、鶴岡両市と山形県遊佐町のマップの配色が異なる点を疑問視。議員活動などを通して「一人でも多くの命を守れるよう、色使いを全国統一すべきだ。東日本大震災で大きな被害を受けた東北から変えたい」と訴える。
 江口さんは震災の津波で宮城県女川町で暮らしていためいの高橋歩さん=当時(26)=とめいの長男凜ちゃん=当時(0)=を失った。「悲しみを繰り返してはいけない」と痛感したことが活動の原点になっている。
 慰霊のため毎年、女川町を訪れる。青、緑、黄などで浸水深を示す酒田市のマップと異なり、女川町が暫定公開している防災マップは浸水域を網掛けで表示。江口さんは「印象がだいぶ違う。万が一の時に戸惑うかもしれない」と語る。
 山形県は2016年、日本海の大規模地震で発生する津波の浸水・被害想定を発表した。その後、初めてマップを作る遊佐町は、マップを更新する酒田市と浸水深の配色の統一を視野に入れ、意見を交わした。
 遊佐町が県の凡例を活用する意向だったのに対し、酒田市は「色使いを変えると市民が混乱しかねない」と従来の独自の配色を踏襲し、別々になった。遊佐町総務課の担当者は「それぞれの事情から調整できなかった。山形に限らず市町村が足並みをそろえるには国や県の積極的な働き掛けが必要だろう」と言う。
 ハザードマップに記す津波避難場所、津波避難ビルの表示はかつて、自治体ごとにバラバラだった。総務省消防庁は05年、住民だけでなく観光客、外国人にも分かりやすく伝えようと標識を統一。十数年がたち、今では普及している。
 多賀城市は津波が発生した場合、地域によって塩釜市、宮城県七ケ浜町の高台などに避難すべき住民がいる関係で、両市町と調整を図った。最新のマップには両市町の避難所とそこへの避難方向を掲載している。
 多賀城市は交通の要衝で、震災では市内で犠牲となった188人のうち半数が市外の人だった。交通防災課の担当者は「将来、自治体の境界を越えても分かりやすいマップにできれば理想的だ。生活圏が一体化している近隣市町との連携を探りたい」と話す。