<273人一挙採用>
 総勢273人のフレッシュマンがひな壇に並んだ。桁外れの新規採用で1日、スタートを切った北上市の東芝メモリ岩手。半導体大手東芝メモリ(東京)の子会社で、今秋には新工場が完成する。
 東芝メモリを筆頭に企業進出ラッシュに沸く北上市。市内10カ所の工業団地には250を超える企業がひしめき、区画がほぼ埋まった。
 1990年度に31億4000万円だった市の固定資産税収入は、企業誘致効果で2017年度には68億7000万円に倍増した。
 市企業立地課は「東芝メモリが来たことで関連企業の進出が相次いだように、他業種でも一つの企業誘致に関連企業の進出が連なる好循環が生まれている」と説明する。
 他の市町村がやっかむ「北上独り勝ち」。しかし、地域経済の急進は副作用も生み出していた。
 岩手労働局によると、岩手県内の19年2月の有効求人倍率は平均1.43倍。北上管内は1.89倍と突出しており、特に高卒は求職349人に3倍近い1036人の求人が殺到した。

<外から呼べず>
 若い人材は待遇や知名度で勝る大手企業に流れ、医療や福祉を中心に地場の中小企業は人手不足が慢性化。「以前は雇用対策として高校生と事業所を回って採用をお願いしていたが、この6、7年で状況は一変した」(北上商工会議所)。
 県や市が地元就職説明会で高校生に地場産業を紹介したり、地元企業を招いて求人票作成勉強会を開催したりしても焼け石に水だ。
 地元企業から「外国人材に頼らざるを得ない」との声も出始めたが、北上管内の外国人労働者数(18年10月)は362人。これもまた焼け石に水だ。
 北上公共職業安定所は「外から人を呼ぼうにも、市内の住宅は空き物件がほとんどない。このままでは事業継続に黄信号がともる事業所も出てきかねない」と困惑する。
 県は北上で働き、盛岡で暮らす生活スタイルを提唱し、新総合計画(19~28年度)に北上川流域地域で産業振興を推し進める「北上川バレープロジェクト」を盛り込んだ。
 「北上独り勝ち」の経済効果を広範囲に波及させ、人手不足も解消しようともくろむが、いまだ具体的な施策は示されていない。