東北の水産関係者に動揺と不安が走った。韓国による青森、岩手、宮城、福島を含む8県産の水産物輸入禁止措置を巡る世界貿易機関(WTO)の判断は、漁業者の想定を覆す逆転敗訴。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故からの水産復興の針路に暗雲が漂った。

 「ホヤ養殖業者の3分の2以上は廃業に追い込まれるのではないか」

 国内有数のホヤ生産量を誇る宮城県。県漁協の阿部次夫ホヤ部会長はこう危惧し「再起するとき、韓国への輸出が念頭にあった。希望のともしびが消えてしまった」と肩を落とした。

 県漁協志津川支所の佐々木孝男運営委員長は「このまま輸出禁止が続けば生産者の意欲が下がってしまう」と懸念した。

 綾里漁協(大船渡市)の佐々木靖男組合長は「禁輸解除を期待していた。がっかりしている」と嘆く。浜は昨年、まひ性貝毒によるホタテの出荷自主規制に見舞われた。今回の敗訴と合わせ、「漁業離れが加速しないか」と危ぶんだ。

 禁輸措置が継続される魚種は28種に上り、ホヤ以外の影響も避けられない。

 青森県内からはホタテやイカが主に輸出されていた。県漁連幹部は「(敗訴を機に)風評被害が出てくるのが怖い」と指摘する。

 震災前、韓国にサンマなどを輸出していた鎌田水産(大船渡市)の鎌田仁社長は「最近は不漁続きだが漁獲量が回復した場合を考えると輸出できるようになった方がいい。日本の水産物は世界一安全だと自負している」と話した。

 本州一のマダラの水揚げ量を誇る宮古漁協(宮古市)の坂下尚司市場販売部長は「消費拡大を図る上で、残念な結果になった」。スケトウダラの主な輸出先は中国だが「震災前は韓国に輸出していたので痛手はあるだろう」とみる。

 禁輸措置は5年半に及ぶ。福島県漁連の野崎哲会長は「一審に当たる小委員会では理解を得られていただけにがっかりしている。影響が広がらないことを願う」と話す。同県農林水産部の鈴木秀明食産業振興監は「『福島産は危ない』というイメージを生む恐れはある」と警戒した。

 一方、釜石市の水産加工業の社長は「漁業者、加工業者とも既に禁輸を前提とした体制になっている」と冷静に受け止め、「国際捕鯨委員会(IWC)脱退が国際的な心証を悪くして敗訴の一因になったと思う」との見方を示した。