<20年度が期限>
 点在する集落に沿って流れる安家(あっか)川。土のうが積まれた川岸には、ひしゃげた標識や骨組みだけになった家が無残な姿をさらす。至る所で道路や河川の工事が続き、河川に並行して通る県道をトラックがひっきりなしに行き交う。
 2016年8月に発生した台風10号豪雨の被災地、岩手県岩泉町の復旧工事は、ようやく折り返し点を迎えた。災害公営住宅の建設やインフラの再整備が最終盤となった東日本大震災の津波被災地とは対照的な光景だ。
 台風豪雨被害も激甚災害に指定されたが、国の財政支援は20年度まで。特例で10年の復興期間が設けられた震災とは事情が異なる。町復興課は「一つの町でできる工事量を超えている。多少無理をしてでも期限内に終わらせるしかない」と説明する。
 震災復旧や三陸沿岸道の建設工事と時期が重なったため、人手や資材の調達は難航を極めている。
 県建設業協会岩泉支部の工藤俊治支部長は「どの社も、できる範囲でしか仕事を取れない。人手が足りないので一度リタイアした人にお願いして来てもらうこともある」と打ち明ける。
 震災と台風10号豪雨。短期間に岩手を見舞った二つの災害が「被災地格差」を生み出す結果となった。

<家賃減免なし>
 岩泉町は震災で沿岸部の小本地区が被災。台風豪雨は町全域に深い爪痕を残した。町の被害額は421億円に上る。復旧事業費のほぼ全額を国が負担した震災とは異なり、台風豪雨からの復旧は町にも1割程度の自己負担が生じる。
 18年度までの3カ年に町が計上した復旧費は総額30億円で、年間予算の4割に匹敵。今後は町単独事業の生活橋再建などの負担が見込まれる。
 被災地格差は町内にも内在していた。
 町は震災と台風豪雨で被災者向け災害公営住宅を計114戸整備。震災分51戸は13年に完成し、台風豪雨分63戸も20日に引き渡しが始まる。
 震災分は国が建設費全額を負担し、低所得世帯には家賃の減免措置がある。しかし台風豪雨分は建設費の3分の1が町の持ち出しで、家賃の減免も適用されない。
 同じ公営住宅で家賃格差が生じるため、差額は町がかぶる。中居健一町長は「災害の種類は違っても被災者の状況は同じ。差をつけてはならない。国には被災地の実情に応じた柔軟な制度運用をお願いしたい」と話している。