<手取り14万円>
 「その日暮らしで先が見えない。不安しかない」。5年前に離婚し、女手一つで小学2年の長男(7)を育てる盛岡市の女性派遣社員(39)がため息をついた。
 フルタイムで働いても手取りは月14万円。離婚直後に正社員として就職したが、夜遅くまで保育所に預けていた子どもが精神的に不安定になり、1年で退職した。以後、派遣で会社を転々としている。
 盛岡市と岩手県立大が2016年に市内のシングルマザーを対象に実施した調査によると、働く母親のうち正社員の割合は42.8%にとどまった。二つ以上の仕事を掛け持ちしている人も4.9%。全体の半数超が午後6時以降も働いている。
 過去1年間に必要な食材を買えなかった割合は47.4%で、病気やけががあっても病院を受診しなかった割合は23.2%だった。
 かつてシングルマザーだった女性(35)は「盛岡は東京、仙台などの大都市に比べて労働環境が整っておらず、郡部より人のつながりが薄い。結果、困窮する人が多いのに支援の目が行き届かない」と地方の中核都市で暮らす難しさを指摘する。

<「声を拾って」>
 県都に潜む貧困。もう一つの要因が官民格差だ。
 厚労省によると、18年4月の岩手県の平均賃金は24万7100円で全国平均(30万6200円)を大幅に下回る。一方で公務員の平均給与月額は、県が35万3379円、盛岡市が33万8732円で、ともに全国平均を上回った。
 地元にとどまろうとする若者にとっての「優良企業」は今も昔も県や市町村だ。売り手市場と言われた18年度の新卒採用も、県職員の採用倍率は3.5倍と高水準を維持した。
 公務員は福利厚生も手厚く、県内全ての自治体に育児休暇制度がある。16年度の県職員の育児休暇取得率は女性94.7%、男性5.5%だった。
 これに対して民間事業所の取得率は女性94.9%、男性2.3%。一見すると官民に極端な差はないが、そもそも民間で育休制度を設けている割合は87.1%にとどまる。
 ひとり親家庭の支援に取り組むNPO法人「インクルいわて」(盛岡市)の山屋理恵理事長は「苦しんでいる人の声を拾い、社会に反映させる仕組みをつくらなければ、格差は埋まらない」と指摘する。(連載「いわてを考える」は今回で終わります。盛岡総局・浦響子が担当しました)