任期満了に伴う青森県知事選の告示(5月16日)まで1カ月となった。現職の三村申吾氏(63)は県政史上初の5期目を目指す。新人の歯科医佐原若子氏(65)が立候補の意思を固めたことが4月16日分かり、にわかに一騎打ちの構図となる公算が大きくなった。16年にわたる三村県政が抱える課題を、専門家の視点を交え点検した。
(青森県知事選取材班、5回続き)

<弱い情報発信力>

 人口減少社会の先頭を青森県はひた走っている。
 12日に発表された総務省の2018年10月の人口推計。青森は前年同月比マイナス1.22%と、減少率が6年連続でワースト2位だった。19年3月現在の推計人口は125万7081で、ピーク時の1983年より約27万人も減った。
 特に就職や進学で県外に流出する社会減は、ここ数年5500~6200人台で推移する。県は「新卒者の県内就職率の低さが大きな要因」と見る。県によると、高校生が全国でも下位の56~59%、大学生などは35%前後で低迷している。
 青森県内の高校出身者が約4割を占める弘前大でさえ、昨年3月の卒業後に就職した940人の約7割は県外に流出した。
 「東京への憧れや都市部との給料格差など複数の要因が絡む」
 同大の石塚哉史キャリアセンター長は分析する。県内にも優良企業は多いが「情報発信力が弱く、魅力に気付いてもらえていない」と言う。

<「Uターン」に力>

 県は、県外に進学した県出身者のUターン就職に力を入れる。
 18年度は、大手の就職情報サイトに県内企業の特設紹介ページを掲載。17年度以降、首都圏や仙台圏の計11の大学・短大と次々に連携協定を結び、就職先などの情報を提供してきた。
 ただ、締結した大学からのUターンは、在籍する青森県出身者の2割程度にとどまっているのが現状。県労政・能力開発課の担当者は「あと10%ぐらい引き上げたい」と語る。
 もう一つの打開策の柱が、出身地を問わない移住「Iターン」の促進だ。東京の常設相談窓口を経由した移住者は15年度26人、16年度46人、17年度64人。増加傾向にはあるが、まだまだ少ない。
 昨年8月には、青森県への移住を決めた県外居住者向けの会員制度も作った。会員は引っ越し料金割り引きなど、各種サービスを受けられる。
 県地域活力振興課の担当者は「全国的に地域間の移住者獲得競争が激化している。定住まで見据えた支援が重要になる」と長期的な戦略を練る。
 人口減少に詳しい青森地域社会研究所の竹内紀人常務理事は「一定の人口流出はやむを得ない。島根県といった移住先進県の取り組みなどを参考に、移住希望者を逃さない一層の環境整備が大切だ」と強調する。

◎専門家の目/雇用創出が最優先 青森大付属総合研究所所長 井上隆さん(69)

 青森県の人口減少対策は目に見えた成果が上がっていない。働き口が不足し、若者を中心とした就職希望者が仕事を求めて県外に流出している。
 県内の産業が依然育っておらず、就職希望者を十分に受け入れるだけの採用枠が地元企業にはない。
 人口減少対策として、県はUIJターンなどを推進しているが、県内の就職先を確保しないことには、ほぼ無意味に終わるだろう。
 県外流出のような社会減対策を第一に考えなければならない。雇用の場を拡大し、県外に流れる就職希望者を県内にとどめることを最優先に考えてほしい。
 青森県は、県外に売り出せるような独自の地域資源を活用した商品、サービスの開発を後押しし、産業振興を強める必要がある。
 県外や国外からお金を稼ごうと、農業と観光に力を入れる姿勢は良い。ただ、これらの産業は雇用を創出する力が弱いという側面もあり、今後どう向き合っていくかが重要だ。