任期満了に伴う青森県知事選の告示(5月16日)まで1カ月となった。現職の三村申吾氏(63)は県政史上初の5期目を目指す。新人の歯科医佐原若子氏(65)が立候補の意思を固めたことが4月16日分かり、にわかに一騎打ちの構図となる公算が大きくなった。16年にわたる三村県政が抱える課題を、専門家の視点を交え点検した。(青森県知事選取材班、5回続き)

<後継者がいない>
 「あと5年もすれば高齢化がどんどん進み、農家はさらに少なくなる」
 黒石市のリンゴ農家の男性(66)は、3代続いた農家を自分の代でやめる。息子2人が農業とは別の仕事に就いたからだ。
 男性は「周囲の農家も同じような感じ」と、地域農業の見通しを証言する。
 5年に1度の国の農林業センサスが、担い手不足の深刻さを裏付ける。2015年発表で、後継者がいる青森県内の販売農家は45.4%。半分にも満たなかった。
 県農林水産政策課の担当者は「特に経営が安定しない中小規模の農家に後継者がいない」と指摘する。
 中小農家の離農は、大規模農家への農地集約を加速させた。国が推進する集約方針もあり、00年に5.4%だった県内の耕地面積5ヘクタール以上の農家の割合は、15年には9.2%に増えた。
 農地の大規模化政策から取り残され、後継者がいない中小農家。県は12年以降、小規模農家が点在する地域を対象に、農業を支える農事組合法人などを「地域経営体」に認定し、その育成を進めている。
 県が栽培技術や販路開拓を支援する。経営体の規模拡大を進め、地域雇用の受け皿として農業従事者の収入安定などにつなげる。非農家出身者の参入を促し、担い手不足解消の一助とする方針だ。
 県構造政策課によると、昨年3月末時点で認定された地域経営体は288。規模が拡大し、従業員が増えた経営体もあるという。
 ただ、小規模な経営体もあり、雇用を確保しながら、農業だけで経営を軌道に乗せるのは困難を極める。

<稼げる仕組みを>
 農作物の加工や販売、高齢農家の作業などを請け負う鯵ケ沢町の地域経営体「白神アグリサービス」は、地元の若者ら9人を正社員として雇用する。
 木村才樹取締役は「正社員の人件費や社会保険料がかさみ、農業だけでやりくりするのは難しい。自治体から除雪などの委託作業を回してもらうなど、農業以外で稼げる仕組みが必要だ」と訴える。
 経営体運営の安定化に向け、雇用確保などの観点から、農業分野の枠を超えた県独自の政策が求められている。

◎専門家の目/持続する支援を 弘前大農学生命科学部教授 石塚哉史さん(45)

 三村申吾青森県知事のトップセールスをはじめ、県の農産品を他県よりも国内外に積極的に売り込んでいる。農業産出額は東北1位で、3年連続で3000億円を突破するなど、結果に表れている。
 これまで外部に発信して売り込んだ農産品を今後、安定的に供給することが求められる。生産量が落ち込まないよう、持続性のある産地の維持に向けた育成と支援が欠かせない。
 深刻な担い手不足は、農作物の生産量減少に直結する。後継者の育成とUIターンの推進はもちろん、農業従事者が減っても収量を十分に確保できる新品種の開発などにも目を向ける必要がある。
 地域経営体については、他県も取り組んでいる中で、いかに青森の独自色を出せるかが鍵を握る。
 農家の担い手不足の対応として、情報通信技術(ICT)を活用した「スマート農業」の普及に国は力を入れている。青森県も国の支援を受けながら、スマート農業の導入を強化していくほかない。