任期満了に伴う青森県知事選(16日告示、6月2日投開票)で、核燃料サイクルを巡る論戦が不発に終わる公算が大きい。反対一辺倒の新人の主張が、現状維持の現職の批判票の受け皿となっていないからだ。立地地域で核燃マネー配分の不平等を訴える不満がくすぶる中、住民の意志が宙に浮きかねない状況だ。

 施設立地が生み出す核燃料物質等取扱税(核燃税)の8割5分を、県が囲い込む現状を打開しようとした地元の要望は一顧だにされなかった。
 「新しい知事に問いただしたい」
 宮下宗一郎むつ市長は7日の記者会見で、怒りとも嘆きとも取れる言葉を発した。宮下市長は三村申吾知事(63)の下北連合後援会長。現職を応援する立場でありながら、県の対応に不満を募らせている。
 発端は1月末にさかのぼる。県が条例で徴収する核燃税の地元配分に関し、大間原発(大間町)、東通原発(東通村)、中間貯蔵施設(むつ市)、再処理工場(六ケ所村)が立地する4市町村の代表が、県庁で三村氏に詰め寄った。
 「福井県は税収の4割が立地、周辺市町村に交付される」(むつ市長)、「上限の30億円の撤廃」(六ケ所村長)、「配分を考慮してほしい」(大間町長)
 2014~18年の県の核燃税収入は計964億円で、年平均約193億円。19~23年は計976億円(年平均195億円)と増収を見込む。三村氏は「安定的な制度運用を図る」と繰り返すばかりで芳しい返答はなかった。
 原子力施設が集中する下北半島では首長だけでなく、議員や経済団体からも不満の声が上がる。しかし、大前提は原子力推進にほかならない。反対派に付け入る隙はない。
 核燃反対派の得票率は15年の前回知事選で26%、昨年の六ケ所村長選は6%だった。17年の大間町長選は反対派候補2人合わせても3%にすぎなかった。
 今回、知事選に立候補を予定している新人の佐原若子氏(65)は「事故が起きたら根こそぎ生活が奪われる」と原発ゼロが持論。だが、政策発表の記者会見では「議論を重ねて県民に判断してもらう」と述べるにとどまった。核燃マネーに頼らない説得力のある経済政策を示すまでには至っていないのが実情だ。
 迫る知事選で推進、反対の二元論を超えた議論の深まりは期待できそうにない。

[核燃料物質等取扱税(核燃税)]青森県が事業者から徴収する法定外普通税で、一部が交付金として立地、周辺地域に配分される。従来の交付要綱は、税収の18%か30億円のうち低い方。2014~18年の交付金は毎年30億円(税収の約15%相当)だったため、立地4市町村は3%分の増額につながる上限30億円の撤廃を求めていた。立地自治体への説明もなく、県は今年4月に交付要綱を「30億円以内」へと改定した。