「同郷サロン」などと呼ばれる東日本大震災の被災者の交流組織が、賃貸住宅(みなし仮設住宅)にバラバラに入居した避難者らをつなぐ重要な役割を果たし、孤立を防ぐ機能に注目が集まっている。被災者の孤立は熊本地震でも課題となっており、専門家は「大災害時、プレハブ仮設住宅以外にも被災者の拠点が必要だ」と指摘する。(報道部・鈴木拓也)
 岩手、宮城両県の三陸沿岸出身の被災者が月1回集う「ひまわり会」が4月下旬、仙台市青葉区の西本願寺東北教区ボランティアセンターであった。約20人が三つのテーブルに分かれ、2時間近くおしゃべりを楽しんだ。
 石巻市鮎川浜で被災した青葉区の無職安海こう子さん(82)は「賃貸マンションに住んでいるが、隣の人と会ったことはない。ここでは心を開き、何でも話せる」と笑顔を見せた。
 会の母体は2012年2月に青葉区が始めた交流会だ。区の保健師による訪問調査で、みなし仮設の入居者から「古里の人と会いたい」と相談を受けたのがきっかけという。
 東北学院大経済学部の斉藤康則准教授(地域社会学)によると震災後、仙台市内では20以上の交流団体が誕生した。みなし仮設の入居者がほぼいなくなった現在も複数の団体が活動を続けている。共通の被災体験がある場合は組織化しやすく、孤独感の解消に役立っているという。
 みなし仮設は民間の賃貸アパートやマンションを利用するため、プレハブ仮設に比べて早く供給できる長所がある。16年4月の熊本地震でも導入され、熊本県ではピーク時の17年5月、1万4923戸に達し、プレハブ仮設の4303戸を大きく上回った。
 問題はプレパブ仮設のように拠点化が難しく、被災者が孤立しがちな点だ。みなし仮設の孤独死に関する東日本大震災のデータはないが、熊本県によると孤独死は3月末現在、プレハブ仮設の5人に対し、みなし仮設は22人に上る。
 熊本学園大社会福祉学部の高林秀明教授(地域福祉論)は「行政は戸別訪問など個々の見守り活動には力を入れたが、被災者同士のネットワーク化は不十分だった。国レベルで同郷サロンのようなネットワーク機能について検討すべきだ」と訴える。