日本郵政グループの不適切な営業の実態について、保険契約の解約にこぎ着けた宮城県の男性(81)が河北新報社の取材に応じた。軽度の認知症を患う男性の妻(75)は日本郵便の勧誘を受け、必要のない生命保険の契約を結んだ。加入済みの生命保険の一部を解約させられ、初回保険料90万円余りを支払っていた。

 3月下旬、妻に宛てて、かんぽ生命の終身保険「新ながいきくん」の契約内容を確認する書類が届いた。男性が妻に聞いても身に覚えがないという。家じゅうの書類を捜したところ、91万9571円の支払証明書が見つかり、がくぜんとした。

 男性によると、妻は10年前に保険料の支払いが終わった終身保険「ながいきくん」の一時金40万円を受け取るため、同月上旬に近所の郵便局を訪れた。その場で局員から「新ながいきくん」加入を勧められ、申込書に署名したらしい。

 新保険は加入時に3年分の保険料を一括で納める必要がある。妻の貯金残高は8万円余り。局員が旧保険の入院特約を解約する手続きを取り、解約金約91万円を還付後、現金自動預払機(ATM)で保険料を振り込ませた。ATMの操作を誘導したとみられる上、男性ら家族への契約確認などはなかった。

 男性が後日確認した健康状態に関する質問書には「3カ月以内に医師の診察、投薬、指導などを受けたか」との設問に対し、「いいえ」に丸が付いていた。妻は認知症の症状を緩和させる薬を服用している。男性は投薬を証明する書類を提出して解約、返金にこぎ着けた。

 男性が気付かなければ、3年後からは毎月最大2万6000円の保険料を95歳まで支払わなければならなかった。老後の負担を増やしてまで、死亡時の一時金など重複する契約を結ぶ必要性は感じられなかった。

 男性は「郵便局だから信頼していたのに、もはや犯罪集団ではないのか。全国に同じような被害があると分かり、怒りを覚える。高齢者を食い物にしている」と話す。日本郵便側からの正式な謝罪はまだないという。