「駆け込み需要」の高揚もないまま、来月から買い控えのムードだけが訪れるのではないか-。消費税率10%への引き上げを間近に控え、小売関係者は最悪のシナリオにおびえる。

 ■続く前年割れ

 2014年4月、消費税が5%から8%に上がった。仙台三越によると、同年初めから宝飾品や高額時計が売れ始め、3月には衣料品や雑貨、食品の全項目が前年比10%以上伸びた。

 転じて今年は天候不良もあって7、8月ともに前年割れ。9月に入っても思うように伸びていない。営業計画の担当者は「増税前の買い込みがまだ目立っていない。10月以降は反動減が少なくて済むのか、もっと消費が落ち込んでいくのか。先が読めない」と不安を募らせる。

 藤崎は駆け込み需要を狙い、五月人形と三月人形を例年より3カ月以上早く売り出した。冬用コートも売り場に登場したが、いずれも動きは少ない。

 両社とも、キャッシュレス決済に伴うポイント還元制度は対象外で、国費に頼った消費底上げは望めない。藤崎の小野寺宣克営業本部長は「今でも創業200周年に伴う施策でなんとか前年をクリアしている状態。秋以降はもっと厳しくなるが、お歳暮、クリスマス、初売りといった機会を狙って取り返したい」と引き締める。

 ■需要平準化か

 2度の延期を経ていよいよ実施される増税。目立った駆け込み需要がないことについて、東北経済産業局の相楽希美局長は「今回は軽減税率やポイント還元など、需要の平準化対策に前回にも増して力を入れた。その成果が表れているのではないか」との見解だ。

 しかし、増税が消費者の節約志向を強め、財布のひもをより固くさせる事態は十分に予想される。消費者に身近な存在であるスーパーは、さらなる低価格競争を招きかねないと懸念を深める。

 コープ東北サンネット事業連合(仙台市)の河野敏彦常務理事は、「人手不足の影響で、前回の増税時に比べて労務単価が上がって経営を圧迫しているため、価格は下げられない。増税に伴うシステム開発にも経費がかかっている」と漏らす。

 4日、仙台市内で経団連との懇談会後の記者会見に臨んだ東北経済連合会の海輪誠会長は、「東日本大震災からの復興による需要喚起が先細りになる中、消費税率引き上げによる消費減退が地域経済を冷やすのではないか」と語った。

 増税まで1週間余り。街を包む静けさの意味は10月以降、明らかになる。(報道部・古賀佑美、水野良将)

[ポイント還元制度]10月から来年6月まで、中小事業者の店でクレジットカードやQRコードといったキャッシュレス決済で買い物をした場合、国が消費者に5%(フランチャイズは2%)を還元する仕組み。事業者には端末導入費や加盟店手数料を補助する。登録店舗は5日時点で全国57万7885店。東北は青森4686店、岩手4314店、秋田3738店、宮城9955店、山形4363店、福島6795店。