山形市で隔年開催されるドキュメンタリー映画の祭典「山形国際ドキュメンタリー映画祭」が今年、初開催から30年を迎えた。主催するNPO法人の理事長を務める大久保義彦さん(83)は、映画祭が世界的に注目されるまでに成長したのは、市民や地元の映画ファンの支えがあったからだと語る。(山形総局・熊谷優海香)

◎山形国際ドキュメンタリー映画祭理事長 大久保義彦 さん(83)/時代を忠実に表現する「ニュース」、もっと見てもらえたら。

 -ドキュメンタリー映画祭開催のきっかけは。

 「山形市制施行100周年を記念し、山形の名を世界に向けて発信しようと始まりました。かつて市中心部には小さな映画館が並んでいたり、山形県内各地で自主上映会が開催されたりするなど、山形には映画ファンが多くいたからです」

 「同じ頃にドキュメンタリー映画作家の故小川紳介監督が上山市に移住し、コメ作りをしながら作品を撮っていました。各国の映画祭に参加してきた小川さんは、アジアで初のドキュメンタリーの祭典を映画ファンの多い山形で開こうと、県内の映画愛好家らに協力を呼び掛けました」

 -第1回から作品数や応募数が年々増えています。

 「今年は130の国・地域から計2371本の応募がありました。特にアジアや女性監督の作品の増加は目覚ましく、存在感を発揮しています。30年前の初回の応募は、36カ国から計225本にすぎず、特にアジアからの作品が極端に少なかったのです」

 「当時は政治的や経済的な理由で、ドキュメンタリー映画を撮ることを許されない国が多く存在したのです。プロパガンダみたいに政府を紹介するような作品もありましたから」

 -2017年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の創造都市ネットワークに山形市が映画部門で加盟認定されました。

 「映画祭は毎回400人を超えるボランティアや県内外の映画関係者に支えられてきました。07年に市から独立して民営イベントとなり、規模を維持する難しさもありますが『市民が支える映画祭にしたい』という小川さんの遺志を体現しつつあるのではないかと信じています」

 -今後力を入れていきたい取り組みは。

 「応募作品を収蔵する『フィルム・ライブラリー』では、試写室やビデオブースで作品を公開するとともに、家庭で見なくなった古いフィルムや、過去の山形が写る映像資料の収集・保存にも努めています。ライブラリー全体では国内最大級の約1万8000本の資料が収蔵されています。これをより充実させていけば、貴重な記憶遺産になっていくと思います」

 「ドキュメンタリーとは時代を忠実に表現する『ニュース』そのものだと思います。映画祭やライブラリーにはその蓄積があります。山形の人にもっと見てもらえたらうれしいですね」