台風19号の被害を受けた第三セクター鉄道の阿武隈急行(伊達市)が苦境に立たされている。宮城、福島両県にまたがる鉄路の被害は確認されただけで42カ所に上り、運行を再開できたのは福島県側の区間にとどまる。同社や自治体は再建に全力を注ぐ構えで、不通区間の住民らは「地域の足」の早期再開を願う。(報道部・水野良将、天艸央子)

 福島(福島市)-槻木(宮城県柴田町)の24駅、54.9キロのうち、被害は阿武隈川沿いの山間部に目立つ。特にあぶくま(宮城県丸森町)-丸森(同)は土砂流入、線路の道床やのり面の流出といった被害が24カ所発生した。

 福島-梁川(伊達市)は15日、梁川-富野(同)は23日に運転を再開。だが宮城県側は不通が続き、同社は21日に丸森-槻木で無料輸送バスの運行を始めた。

 丸森町の大学生塩沼泰知さん(19)は21日、バスを使って仙台市内の大学に通った。「ひとまずバスが動いてほっとしたけど、朝の便は午前6時発の1本だけ。少し大変」と話した。

 25日から26日にかけて降った大雨の影響も懸念される。今後の調査次第では、全線復旧に約2カ月を要した東日本大震災当時の被害額約4億3000万円を上回る可能性もあるという。

 阿武隈急行の安海(あずみ)好昭専務は「鉄道施設やインフラの復旧について関係先と調整を進める。厳しい状況だが、宮城県側ではできる限り早く丸森-槻木の運転再開を目指す」と語る。

 阿武隈急行は1988年に全線開業。通勤や通学、観光などで年間約250万人が利用する。ただ沿線の人口減などに伴い、経営は苦戦が続く。2018年度決算は3年連続の赤字で、累積赤字は約11億2800万円に上る。

 台風19号では通勤客らの定期の払い戻しも発生。集客を見込んだ秋のイベントは軒並み中止となり、経営の先行きに影を落とす。

 行政も動きだした。角田市はバス運行への財政支援を国に求めている。市まちづくり交流課の担当者は「なくてはならない公共の足。観光資源としての魅力もある」と話す。

 村井嘉浩宮城県知事は17日、線路復旧に対する財政支援拡充を国に要望した。県総合交通対策課の担当者は「関係機関と連携して運行再開に向け会社を支援する」と説明する。

 内堀雅雄福島県知事も25日、阿武隈急行に対する補助率かさ上げなどを国に要請。県生活交通課の担当者は「一日も早く復旧させなければいけない」と強調した。