宮城、山形両県の蔵王山(蔵王連峰)で深刻化するアオモリトドマツの立ち枯れ被害に伴い、危機的状況に直面している樹氷の再生に取り組む官民組織の設立構想を山形側が進めている。厳冬期初踏破に成功し、蔵王の樹氷最古の写真を残した仙台市出身の実業家早川種三氏(1897~1991年)との縁から、山形の経済界は仙山連携による活動の盛り上がりを期待する。

 2020年度の設立を目指す官民組織は、「蔵王樹氷再生プロジェクト」(仮称)。山形県や山形大農学部、山形森林管理署が連携する方向で調整を始めている。

 プロジェクトは現時点で、蔵王山に自生するアオモリトドマツの苗木を収集して生育し、枯死エリアに植栽するなどの活動を想定。担い手として、市民ボランティアを広く募る方針だ。

 日本山岳会の会員で、コンクリート製品製造の前田製管(酒田市)相談役の前田直己氏(74)は「蔵王や樹氷は宮城、山形両県にとって大切な存在。再生プロジェクトには、早川氏が重きをなした仙台経済界にも関心を持ってほしい」と訴える。

 中央財界で「会社再建の神様」といわれた早川氏は、仙台放送や仙台コカ・コーラボトリングの設立にも携わった仙台経済界の重鎮。慶応大在学時の1921(大正10)年1月、同大山岳部員らと厳冬期にスキーで蔵王山の初踏破を成し遂げた。同年発行の同部年報「登高行(とこうこう)」に、蔵王で最古とされる樹氷の写真を残している。

 前田氏自身は東京の大学を卒業して七十七銀行に入行した際、都内で早川氏に面会して推薦人を引き受けてもらった経緯がある。「早川氏は山岳の話をしてくれるいいおじいちゃんだった」という。

 枯死問題を巡っては11月、宮城、山形両県関係者が集う合同検討会が初めて開かれた。前田氏は「両県民にとって歴史のある山や景観を守らなければならない。再生活動には両県の草の根の運動として市民や企業が参画するのが理想的だ」と語った。

[蔵王山のアオモリトドマツ枯死]宮城県側の刈田峠避難小屋周辺や山形県側の蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅周辺の蔵王国定公園特別保護地区内などで発生し、トドマツノキクイムシによる食害が一因とされる。東北森林管理局の2019年度調査では、刈田峠周辺のアオモリトドマツの森林287ヘクタールのうち111ヘクタールで枯死が起き、枯死木のみのエリアが8ヘクタールあった。地蔵山頂駅周辺では76ヘクタールのうち50ヘクタールで枯死があり、枯死木のみは16ヘクタールだった。