岩手県大槌町の小中一貫の義務教育学校「大槌学園」で14日、卒業式があり、中学3年生に当たる9年生67人が学びやを巣立った。卒業生は東日本大震災の発生で幼稚園などの卒園式や小学校の入学式ができなかった世代。今回も新型コロナウイルスの感染拡大で式の実施が危ぶまれたが、教員の強い思いがあり、規模を縮小して開催した。

 松橋文明学園長は式辞で「震災からの9年間、思い切り走ったり笑ったりできない時があり、つらかっただろう。皆さんには苦労を笑顔に変える力がある。被災地の経験を誇りと自信にしてほしい」と励ました。

 卒業生代表の南雲心寧(ここね)さん(15)は「コロナ対策で休校が決まった時、卒業式ができるのか不安だった。式を開いた先生たちの決断に感謝する。9年間にはさまざまな出来事があった。当たり前の日常がいかに大切かを学んだ。強く生きていく」と答辞で誓った。

 大槌学園は小学校4校と中学校1校が震災後に統合を重ね、2016年4月に開校した。小学校の卒業式や中学校の入学式に当たる行事はない。

 学園は「節目となる式典を経験していない。卒業式まで奪うわけにはいかない」(那須聡副学園長)と実施を決定。出席者を卒業生と保護者、教職員に限定し、マスクの着用を義務付けるなどの対策を取った。

 保護者の佐野真琴さん(47)は「9年前を考えると感無量。避難所で周りの方から手作りの卒園証書をもらったことを思い出す。式の規模は縮小されたが、大切なのは形ではないことを知る子たちなので心に響いているはずだ」と語った。