東北最大の都市、仙台市には各地から学生が集まる一方、就職を機に首都圏へと流出する傾向が顕著だ。選ばれない地元企業、選ぶ理由を見つけられない若者-。学生と地元企業が一緒に悩み、行動し、成長する「課題解決型」のインターンシップは、そんな擦れ違いの関係を変えるかもしれない。宮城県内の芽吹きの現場をのぞき見た。
(報道部・天艸央子)

 2019年8月、石巻市の水産加工会社「三養水産」。宮城県産のカキと野菜を使った赤や黄色、ピンクのスープの新商品を前に、東北学院大経営学部3年の高橋ひな子さん(21)と法政大社会学部3年菊池成美さん(21)が頭をひねる。

 「『映え』は一瞬で消費される。客は二度と同じ商品に戻ってこない。本当にそれで良いのかな?」

 インターン生の2人が発した言葉に、辻尚広社長(46)はハッとした。

 2人には「『映え』を意識したマーケティングプラン」を課していた。辻社長は「前提がずれていたと気付かされた」。テーマを「長く愛される三養ブランド」に改め、3週間のインターンが走りだした。

 三養水産のインターンは、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県で復興庁が主催する「復興・創生インターン」の一つ。被災地の企業が抱える課題の解決に経営者と学生が共に取り組む、16年に始まった「課題解決型」のプロジェクトだ。

 ヤフー(東京)と県内の若手漁師らでつくる一般社団法人「フィッシャーマン・ジャパン」(石巻市)の松本裕也さん(34)が、水産業のインターンをサポートする。18年から春と夏の年2回、それぞれ石巻市の水産業6社と大学生12人を支援してきた。

 震災で失った販路の回復、人材確保、漁獲不振、魚介類消費の縮小…。課題山積の沿岸部に全国各地から学生が集う。「学生は凝り固まった考え方に『なぜ?』を素直に切り込める」と松本さん。経営者には、新たな発想に耳を傾ける意識改革の必要性を訴えてきた。

 変化は学生の側にも起こる。松本さんは「学生は切実な現場に直面し『個として何ができるのか』を考え始める」と分析する。国家公務員に内定しながら地方水産業の現状を見たいと参加し、起業やベンチャーに進路を変えるケースも少なくないという。

 松本さんの助言を受けつつ、高橋さんと菊池さんは三養水産のマーケティングプランに着手した。ターゲットを首都圏の30代女性に定め、会員制交流サイト(SNS)や東京都内でパッケージに関するアンケートも実施。検証を重ね、ブランドを練り上げた。

 最終報告会で発表したキャッチコピーは「雨の日に食べるスープ」。落ち込むことがあっても、食事の時くらい忘れたっていい。そんな思いを込めた。

 3週間のインターンを終えた高橋さんは「大人が学生の提案に本気で向き合ってくれた。進路を考えるとき、ここでの経験が自信になる」と笑顔を見せた。