新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの人が密閉空間に集う芸術文化イベントは真っ先に自粛を要請された。国内外のオーケストラ数団体に関わっているが、自分の指揮活動への影響は3月から出始め、現時点で9月までの計32公演が取りやめになった。東日本大震災時は自分の公演で幸い一つもキャンセルはなかった。今回のダメージは比較にならない。

 芸術総監督を務める山形交響楽団は4~6月の3カ月間で公演取りやめの損失が7000万円に上り、8月まで公演がないと1億円超の収入を失う。楽団員の雇用維持に毎月2000万円かかる。雇用調整助成金を申請するが、満額は認められないだろう。

 チケット収入以外は国や自治体の助成金、企業からの支援で成り立っている。企業はコロナの影響で疲弊している。感染がある程度収束しても再流行を常に念頭に置いた活動になることが予想され、例えばコンサートホールは定員の半分までしか入れないといった措置が取られる可能性もある。費用対効果の面で二の足を踏むスポンサーが増えることを危惧している。

 オーケストラは自立が望ましく、財政的な自助努力をすべきだが、今の状況では難しい。芸術文化に対する政府の支援は十分とは言えず、しかも遅い。国の助成対象となっている芸術文化イベントは多いが、自粛で中止すれば基本的に補助金は支払われない。

 ドイツでは文化担当相がフリーランスや中小事業者も含め「芸術家の皆さんを見殺しにはしない」と早い段階で声明を出した。日本政府に同様の発信をしてくれる人がいないのは残念だと思う半面、ドイツと同じような状況をつくってこれなかった私たち日本の芸術家も反省しなければならない。社会生活の中で芸術文化が不可欠な存在であることを、多くの人たちに伝えられなかったことの裏返しだからだ。

 コロナを機に新しい発想で発信し、ファンと交流する時代に入りつつあると思う。3月下旬に日本センチュリー交響楽団と無観客公演をインターネット動画サイトで配信し、全国から寄付が集まった。これまでクラシックや楽団に縁がなかった人にも届けられ、ファンの開拓につながると感じた。私自身もビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使って、吹奏楽に打ち込む地方の高校生と会話するサロンや動画投稿サイト「ユーチューブ」での発信を始めた。コロナのおかげ、と極力前向きに考えるようにしている。

 そうした心境に至るまでは正直言って非常に苦しかった。「何もかもなくなった」との思いにとらわれ、モチベーションを保てなくなった時期があった。だが、音楽や歌は人間の営みの中で途絶えたことがない。人間のDNAは音楽を必要としているはずだと考え直した。新しいことに挑み、多くの人を「音楽の役割や魅力を誰かに伝えたい」という気持ちにさせていきたい。それが結果的に支援の輪を広げると思う。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、私たちは過去に経験のない閉塞(へいそく)感に包まれている。戦後最大の危機とされるパンデミック(世界的大流行)は現在に何を突き付け、どのような未来をもたらすのか。5人の識者に聞いた。
(聞き手は報道部・若林雅人、横山勲)