岩手県南の一関地方で、結界「岩手の六芒星(ろくぼうせい)」がパワースポットとして注目されている。六芒星を構成する六つの寺社にはそれぞれ、古代に自然神信仰の対象となった巨岩「磐座(いわくら)」がある。提唱者の郷土信仰研究家金田渉治さん(59)=岩手県一関市=と訪ね歩いた。
(一関支局・金野正之)

◎白山神社 中尊寺金色堂傍らに

 岩手の六芒星(ろくぼうせい)を、陰陽五行説で万物の基を成すとされる要素「木火土金水(もっかどごんすい)」になぞらえると「金」に当たる。金色堂で有名な世界遺産・中尊寺の敷地内の最奥部に立つ。

 850年、慈覚大師が開いたとされる。奥州を治めた安倍氏らと朝廷軍の源氏が争った前九年の役、後三年の役を経て、藤原清衡が中尊寺金色堂を建立するより270年以上も前だ。

 岩手の六芒星提唱者で郷土信仰研究家の金田渉治さん(59)=一関市=は「中尊寺がある山自体が岩盤。それを巨大な磐座(いわくら)として、東北の統治者たちが信奉したのでしょう」と語る。

 安倍氏の拠点で、前九年の役の激戦地だった衣川柵跡を北側に見下ろせる。「六芒星の中で見晴らしのいい山の上にあるのは〓草(もくさ)神社と白山神社だけ。軍事的役割もあったとみられる」と推測する。

◎滝神社 滝が流れる秘密の森

 北上川近くに立つ。金田さんは「簡単な道筋でなく、クマが出る恐れもある。でも、アニメ『となりのトトロ』の森のような別世界に行ける」と言う。

 JR一ノ関駅から東の狐禅寺藤ノ沢地区へ。幹線道路沿いの一角に「普賢沢不動の滝」の案内表示と地図がある。

 そこからあぜ道を数百メートル縫うと今度は「滝渓谷入り口」の表示板。従って右側の坂道を数百メートル歩いて下った先に、秘密の森がある。こけむした社殿。隣には磐座が鎮座し、表面を潤して滝が流れ落ちていた。

 北上川で竜神に連れ去られた姫を坂上田村麻呂が救う伝承や、滝の水で目を洗うと眼病が治るとのいわれがある。昔は北上川岸から神社に至る道もあったようだ。

 金田さんは「安倍氏の時代、北上川から平泉方面へ進入してくる敵軍を封じる願いを懸けた場所だろう」と推論し、「木火土金水」の「水」に位置付ける。

◎三嶋神社 活火山須川岳を守護

 東北自動車道を西へ横切った山あいの萩荘中大桑地区にある。801年、坂上田村麻呂が三嶋大社(静岡県伊豆市)にあやかって参拝したのが始まりという。

 目の前を走る国道457号は、12世紀に源義経が藤原秀衡を頼って平泉に身を寄せる際にも通ったとされる旧迫街道だ。西へ進むと須川岳(栗駒山)へと続く。金田さんは「木火土金水」の「火」と見立てる。

 その理由は「活火山の須川岳を守護する主要な神社がどこかと考えたとき、周辺でここしかあり得ないから。南に向かえば多賀城へと続き、古代の街道の要所と考えられる」。

 神社の裏山は石の産地だったとされ、磐座は拝殿の裏側に隠れている。境内には同じく活火山の鳥海山にゆかりがある石碑などが多数並んでいた。

[岩手の六芒星]提唱した一関市の郷土信仰研究家金田渉治さんによると、岩手県一関地方の鹿島神社、三嶋神社、達谷窟毘沙門堂、白山神社、〓草神社、滝神社を結ぶ。大きさは東西、南北とも12~13キロ。12世紀前後、安倍氏が奥州平定を目指す源氏ら朝廷軍に対抗するため、6寺社の巨石を通じて結界を張ったとされる。安倍氏は有名な陰陽師(おんみょうじ)安倍晴明の親族に当たる。

※〓は「にんべんに舞」